カワイイ子猫のつくり方

すると、朝霧は不意にフッと、小さく笑った。


(…え…?)


「一丁前に怒ってるのか?面白いな、お前」


普段、学校では殆ど笑顔など見せない朝霧。

見せても口の端を僅かに上げて不敵な笑みを浮かべている程度なのに。

こんな顔を見たのは、初めてだった。

(何なの、その顔…)

可笑しいのを堪えているような、その控えめな笑顔に実琴の目は釘付けになる。

先程の怒りなんて驚きで何処かへ吹き飛んでしまった。

だが…。

「…そんな訳ないか」

そう、すぐに己の言葉を打ち消すと小さく肩をすくめた。

その顔はもう、いつもの仏頂面に戻っていた。


(もう。ホント、かわいくないんだから…)


いつだって朝霧が可愛いかったことなんかないし、そんなことを言う奇特な人なんか何処を探してもいないとは思うけど。

さっきの笑顔を見て、ちょっとだけ…。本当に少しだけだけれど、ドキッ…っとしてしまっただなんてことは、誰にも言えない秘密だと思った。




その後、実琴は朝霧に抱えられたまま別の部屋へと移動した。

先程リビングに置いておいた鞄を手にすると、一般的な家屋とは比べ物にならない程に広々とした階段を上り、二階へと向かう。

奥へと続く広い廊下をゆっくりと歩き、二つ目のドアの前まで行くと朝霧は足を止めた。

慣れた様子でドアノブに手を掛ける。

(ここが朝霧の部屋…なのかな?)