カワイイ子猫のつくり方

『ちょっと…。何か、さっきから朝霧溜め息ばっかりついてるよ?そんなんじゃ幸せが逃げていっちゃうんだから』

実琴はそう言ってやりたかったが、口から出てきたのは「みゃー」とか「にー」とか、そんなものだった。

(ううぅ…歯がゆい…。言葉が喋れないのってこんなに苦痛を感じるものなんだなぁ…)


自分の中では伝えたい言葉や気持ちがちゃんとあるのに、それを相手に伝えることが出来ないもどかしさ。


(…さっきのネコちゃんも、こんな風に私に何かを訴えようとしてくれていたのかな…?)

樹の上で小さく震えて鳴いていた子猫を思い出す。

(あの子は今、どうしてるんだろ?)

自分がこうして『子猫』になっているということは、向こうが『辻原実琴』になっているのかも知れない…と考えるのが自然だけれど。

(さっきはずっと気を失っていたけど…。目が覚めたらきっと、訳も分からずに不安だよね)

せめて目が覚める時に傍にいてあげられたら、と思う。

自分に何が出来るか分からないけど。

戻り方なんか、知らないけれど…。



思わず気持ちが沈みかけて俯いてしまった実琴を、朝霧が突然両手で抱え上げた。

『えっ…?何っ?』

そして自分の目線の高さまで持ち上げると、じっと様子を窺うように見つめてくる。

まるで、こちらの心を見透かすような、真っ直ぐな視線。


(…あさ、ぎり…?)