「う…」

あまりに素直な反応が返ってきて思わず絶句する。

ここまで素直だと何だか朝霧が可愛く見えてきてしまうから不思議だ。

(でも、そこまで言うのなら…)

腹を括ろうじゃないか、という気にもなってくる。

それに、恥ずかしさは勿論あるけれど、こんな風に求められるのは、それはそれで嬉しい気もした。


「じゃ…あ」


無言で静かに見下ろしてくる朝霧に、実琴は真っ赤になりながらも目を閉じていて欲しいと伝えると、朝霧は素直にそれにも応じてくれた。



静かな部屋に二人きり。

目の前には、目を閉じて静かに佇む朝霧。


(すごく、緊張する…)


自分にはキスの経験なんて今まで一度もなかった。

先程の子猫の時のだって殆ど条件反射的なものであり、自分でもよく覚えてはいないのだ。


言葉が伝わらない歯痒さと寂しさ。

そして何より朝霧に気持ちを伝えたくて必死だった。

本当にそれだけ…。


自分を見つめて欲しくて。

子猫のミコではない実琴としての自分を必要として欲しくて…。


実琴は緊張気味に背の高い朝霧を見上げ、背伸びをするように僅かに踵を上げかけたが、朝霧は長身の為このままでは届きそうもないことに気付く。

「あの、ごめん朝霧…。少しだけ屈んで…?」

控え目に声を掛けると、朝霧は僅かに背を曲げて前屈みになった。

これなら、つま先立ちをすれば何とか届きそうだ。