(なに…?ここ…)


恐らく朝霧の家なのだろうということは分かる。

今いるのは玄関先で、目の前には庭が広がっていて。その右奥の方に、自分は寝ていて覚えてはいないが、きっと今くぐって来たのであろう門が見える。

こう言えば、わりと普通なのだが…。


(広さ、ハンパない…)


両親には申し訳ないが、建て売りである自分の家の庭など、てんで比べ物にもならないと思った。

広さは勿論のこと、綺麗に手入れされた庭は、まるでどこかの公園のようである。

(これって洋風庭園ってやつだよね。スゴイ綺麗…。もしかして、朝霧の家ってお金持ち?だったりするのかな??)

思わず恐縮している実琴を余所に、朝霧は自然な動作でドアを開けると、その家の中に足を踏み入れた。

途端に奥から声が掛かる。


「伊織坊っちゃま、お帰りなさいませ」 

「…ただいま」


(ぼっ…ぼっちゃまッ?!)

実琴は目を丸くした。

奥から出てきたのは背筋のピンと伸びた、品の良い年配の女性だった。

だが、その呼び名と服装等から家族…というのとは少し違ったものだということが何となく判る。

(朝霧のおばあさん…というよりは、お手伝いさんって感じなのかな?それにしても、朝霧が家で『伊織坊っちゃま』なんて呼ばれてるとは!)

何となく朝霧の弱味を握ってしまったような気がして、実琴はコッソリほくそ笑んだ。