カワイイ子猫のつくり方

「……っ…」

引き寄せられた実琴は気付けば屋上の縁を背に、そこに片手を付いている朝霧の腕の中に囲われるような形で立っていた。

掴まれた右手首はそのままに、朝霧の整った顔が間近に自分を見下ろしている。

(ち…近いっ!)

半ばパニックになりつつも、何だか大変なことになっているということだけは解る。

「あっ…あの、離してっ」

このままでは心臓に悪い。そう思って真っ赤になりながらも懇願するが「駄目だ」と即却下された。

「返事をするまで離さない」

そう呟くと「嫌なら直ぐに断ればいい」なんて勝手なことを言っている。


(ホントに勝手だ。勝手だけど…っ…)


この角度から見上げる朝霧の顔は、ミコとして一緒にいた時の目線とあまり変わらなくて。昨日まで一緒にいた筈なのに、どこか懐かしい感じがして切なくなる。

実琴は耐えられなくなって朝霧から視線を外すと俯いた。

胸が締め付けられる思いがした。


「本当は、私だって…。もっと一緒にいたかった。朝霧の傍に…いたかったよ…」

知らず声が震えてしまう。

頬に熱が集中して、何だか頭がクラクラする。

そんな実琴の頭上から、思いのほか優しい声が降りてきた。

「なら、ずっと傍にいれば良い」

「本当に…子猫じゃなくても、いいの…?」

「俺はお前が良い」

「朝霧…」


再び、そっと見上げると。

朝霧が柔らかい眼差しで微笑みを浮かべていたから。


実琴もつられるように笑顔を浮かべるのだった。