カワイイ子猫のつくり方

実琴はポケットからそっと飛び降りると、ゆっくりとベッドの方へ歩み寄って行った。

「おい、辻原っ…」

小声ではあるものの、突然の実琴の行動に若干慌てた様子で声を掛けてくる朝霧に。

『大丈夫。見えてるから』

小さな声で「みゃー」とだけ返す。

「…何?」

「どうやらミコちゃんには、この闇の中でも室内がちゃんと見えているらしいわよ。大丈夫だって言ってるわ」

すかさず通訳が入り、朝霧は小さくため息をついた。

「成程ね…」

「あ、でも私もだいぶ目が慣れてきたわ。窓から外明かりが結構入ってきてるのね」

明るい場所から入って来た時には暗闇だと思っていたそこは、部屋の奥に面している大きな窓からうっすらとだが光が差し込んでいた。

どの病室にも常設されている遮光カーテンは端に纏められていて使われておらず、レースのカーテンのみが引かれていて、青白い月明かりがぽんやりと室内を照らしている。


目が慣れて足下まで見えるようになった朝霧達は、ベッド横にいる実琴の傍へと足音を立てないよう慎重にやって来た。

「そこのマットにだけは気をつけろよ。それを踏んだら即、人が来るからな」

「にー」

(そうだった。気をつけなきゃ…)

すぐ側に薄暗い中でも判る程度に色の変わっている部分がある。どうやら床部分に貼り付けてあるようだ。多分これがセンサーマットなのだろう。

実琴は大回りするようにそれを避けると、ベッド横の椅子の上へと、ふわりと跳び乗った。