正直、驚かなかったと言えば嘘になる。

まさか、ミコが辻原だったなんて。


『木から落ちた何らかの衝撃で中身が入れ替わってしまった』


そんな漫画みたいな設定アリか?と普通なら誰だって耳を疑いたくもなるというものだ。

だが、俺が今までミコに感じていた違和感。それがミコ(辻原)によって語られた真実によって、全てにおいて妙に納得出来てしまったのだから仕方ない。

信じる、信じないというよりも、感覚の問題だった。

こいつが辻原だと知ったことで何かが自分の中でしっくりくる…というか。

その時点で認めるしかなかった。

最近、やたらと夢の中に辻原が出て来ていたのも、自分の中で何かしらを感じていたのかも…とさえ思える程に。


(俺も相当キテるな。今の俺ならまた『お祖母さまの霊』が見えそうだ)

純真だった幼少時代のように。

いや、別段見たくもないのだが。


だが、ミコが辻原であると分かったことで安心した部分もある。

昼間、病院で見た『辻原』の様子についてだ。

あれの中身が子猫なのであれば、まともに歩けないのも言葉が話せないことにも何も問題はないし、取り乱していたことも頷ける。

頭を強く打った上での障害か何かと疑っていたことを思えば、その点に関しては全く心配はなくなったのだが…。

(医療的な処置では何の解決にもならない今の状況の方が、逆に厄介…だよな)


向かう先の道へと続く街灯の明りを眺めながら朝霧は小さく息を吐いた。