(……え?)

笑えない、冗談…?


本気で言った筈がないと頭では分かっているのに。

なのに、何故か朝霧が真っ直ぐな視線を向けて来たりするから。

その視線に射られているかのように、身動き出来ない。

目が逸らせない。


瞳を見開いて固まっている実琴をじっ…と見下ろしながら、朝霧が静かに口を開く。

「カワイイ子猫がいる生活っていうのも悪くないなと思ってな」


(可愛い…子猫?)


確かに子猫ちゃん(本体)は本当に可愛いけれど。

でも、それは別に中身が『私』ではなくても良いのではないだろうか?

そんなことが頭を過ぎってゆく。


(どういう…意味、なんだろう…?)


疑問が頭の中をぐるぐる回っている。

それでも、朝霧は変わらない瞳のまま続けた。


「お前…。どうしても元に戻りたいか?」

『…朝霧?』


(何で、そんな顔で…そんなことを聞くの?)


ただただその顔を見上げていると。

不意に朝霧は視線を横に逸らし、僅かに自嘲的な笑みを口元に浮かべると「…なんてな」と、小さく呟いた。


『…えっ?』


「…冗談だって言ったんだ。本気にするなよ」

『はあっ!?』


(信じられないっ!!)


頭にきて『いったいなんなのよっ!』とか文字を指さして伝えようと前足をバタバタやっていたが、

「半分は本音だけどな。でも…」

そんな朝霧の声が聞こえて来て、ハッと動きを止めた。

「お前がいないと学校もつまらないしな」

振り返り見た朝霧の横顔は…。


(もしかして…照れてる?朝霧が…?)


「仕方ないから協力してやる。元に戻る方法を考えるぞ」