カワイイ子猫のつくり方

その声に恐る恐る振り返ると、普段より僅かに瞳を見開き、驚きの表情のままこちらを見下ろしている朝霧と目が合った。

まるで不思議なものを見るような、そんな瞳。


(そりゃあそうだよね…。それが普通の反応、だよね…)


書いてあるものを読んだところで、未だに信じられないだろう。


実琴は、肯定の意味を込めて大きく頷いてみせた。

明らかな反応を見せる、その子猫の行動に。朝霧は無言で瞳を大きくしたまま何かを考えているようだった。


『朝霧…』


実琴がパソコン上に書いたのは、自分が実は辻原実琴であるということ。

そして、結果的に騙すような形になってしまったことへの謝罪だった。

子猫を助ける為に力を貸して欲しいという所までは、朝霧が先に目覚めてしまい、書けなかったけれど「図々しいのを承知で協力して欲しいことがある」との前振りまでは打ち込んでいた。


『ごめんね、ホントに…。信じられないだろうし、どこか裏切られた感が強いかも知れないけどっ…。本当…朝霧には感謝してるんだよっ』

真っ直ぐに向けられる視線と無言の間に居たたまれなくなって、わたわたと取り繕うように言っていると。

朝霧が不意に、フッ…と破顔した。


「ばーか。何言ってるか、全然わかんねぇよ」


『……っ…』

その、思わず堪えきれずに溢れてしまったような笑顔が、あまりにも眩しくて。

思ってもみなかった優しい眼差しに、実琴は呆然と朝霧を見上げていた。