「…ミコ…?」
突然、後ろから声が掛かり心臓が止まるかと思った。
まさか、朝霧が既に目覚めていたなんて。
(全然気が付かなかったっ!いつから見てたのっ?)
途端に緊張しながらも、実際は今更だな…と思った。
そう。今更焦っても仕方ない。
ゆっくりと振り返ると、驚きの表情をした朝霧と目が合った。
(朝霧のこんな顔、珍しいかもしれない…。でもきっと、これを読んだらもっと驚くよね…)
こんな時に、そんなことを頭の片隅で思っていた。
学校での朝霧は、いつだってクールな、どこか冷たい眼差しを皆に向けていて、何事にも動じない様子だった。
でも、子猫になってみて…。朝霧に拾われて…。本当は優しい表情も沢山持っていることを知った。
学校では知り得ることの出来なかった、朝霧の素顔。
(でも…。もうすぐ、きっと…。そんな顔も見れなくなっちゃうんだね)
寂しさや悲しみ。
そして、心の奥底に芽生えてしまった切ない気持ち。
様々な想いが込み上げて来て、不意に泣きそうになった。
すると…。まるで、そんな様子に気付いたように「どうしたんだ?」と朝霧が声を掛けてくる。
子猫に優しい朝霧…。
でもね、ごめんね。
私、本当は…ただの子猫じゃないの。
いたたまれなくなって、朝霧に背を向けた。
パソコンに打っていた文章は、まだ書き途中だったけれど、もういいと思った。



