『パソコンを使って朝霧に事の詳細を伝える』


何て名案なんだろう。そう思う反面。

(…こわい…)

実琴は思わず毛を逆立てると、小さく身震いをした。 


実際に朝霧が事実を知ったらどんな顔をするか。

今向けられている温かい目が、冷たい視線に変わるのを見たくない。

きっと、いつも学校で見せているような冷ややかな瞳に変わるのだろう。

いや、今まで結果的に騙していた私の行動を知って、それ以上に冷たい眼差しを向けられるかも知れない。

それは仕方のないことだと思う。でも…。

(朝霧の反応を見るのが怖い…)


それでも、今こうしている間にも子猫は何も分からず『実琴』の中で怯えているかも知れない。

今も助けを求めているかも知れない。

それに自分たちが元の姿に戻る為には、朝霧に協力を仰ぐのが一番の近道なのだ。

(そんなのって勝手だね…。分かってはいるんだ…)

それでも、朝霧にお願いするしか良い方法が見つからないから。

(それに、猫ちゃんに優しい朝霧なら…。きっと協力してくれるよね…?)

どんなに自分が非難されようと、侮辱されようとも構わないから、必死に頭を下げてお願いしよう。

(居心地が良いからって、いつまでもこんな風に朝霧の家の子猫でいられる訳、ないもんね…)


実琴は意を決すると。


ぽち…ぽちぽち…


前足を伸ばしてゆっくりと、キーを一つずつ押していくのだった。