(朝霧は…いったい、どういうつもりなんだろう?)


朝霧のジャケットのポケットに収まりながら、実琴はそこから見える朝霧の顔をそっと見上げながら考えていた。

『一緒に連れて行ってやろうか?』

そう言った時の朝霧は、こちらを試すような探るような瞳をしていて、実琴はつい『朝霧…?どうして…』と、その意図を聞き返してしまったのだが、それが人の言葉として伝わる筈もなく、結果として「みゃあ」と、上手い具合に子猫が返事を返したような形になってしまった。

そのミコの返事に朝霧は、小さく「よし」と頷くと。

「お前の行動力に免じて付き合ってやる。但し俺が連れて行けるのは病室の前までだがな。お前が何をしたいのかは知らないが、騒ぎだけは起こすなよ」

そう言い聞かせるように言うと、自分のジャケットのポケットへとミコを忍ばせたのだ。


(朝霧はミコの行動をどう思ってるんだろう…)

何をしたいのかは知らないけれど、協力してくれる。その意図は何処にあるんだろう?

それも子猫を相手に。

『騒ぎだけは起こすな』

それを猫に言ったところで、普通ならば無理な話で。

(無理な話どろこじゃない。ある意味無茶苦茶だよ…)

それでも、朝霧は…。


ミコを信じているのだろうか?

(もしかして朝霧はミコが普通の子猫じゃないことに気付いてる…?)


『俺には分からない大切な理由が、お前にはあるんだろう?』

そう、言われている気がした。