その頃。

同建物の4階屋上では、朝霧父の守護霊であるという女性と実琴が未だ会話中であった。


『そうねぇ…とりあえず猫ちゃんを眠りから覚まして。まずは、それからかなぁ』

『そう…ですよね』


どうしたら元に戻れるのか。少しでも知恵を借りておきたかった。

(でも、どうやったら目を覚ましてくれるんだろう?)

今、自分は折角近くまで来ているのだ。自分に何か出来ることはないのだろうか?

実琴はあれこれと、頭の中で模索していた。


『それで、本当なら手っ取り早いやり方は、同じことをしてみるのが一番だと思うのよ』

『同じこと?』

『そう。あなた達の場合は、木から一緒に落ちるってことよね。その衝撃で入れ替わってしまったんだもの。もう一度試す価値はあるんじゃないかしら。でも、まぁそんな単純な話ではないかも知れないけれどね』

『なるほど…』

確かに試す価値はあるかも知れない。

実琴は大きく頷いた。


だが、その場合いくら目を覚ましてくれたとしても今の状況的にはキツイのではないだろうか。

(流石に、すぐに退院…って訳にもいかないだろうし。何より…)

目覚めた時の状態はどうなっているのか?それが何より不安だった。

人としての言葉を話すのか?

(「にゃーにゃー」とかだったら、(はた)から見たら私…きっと可哀想な人だよね…)

特に弟の武瑠辺りには、哀れな眼で見られること間違いなし、だ。