「げ!マゼルダばばぁ!」


「誰がばばぁだ!お前らより年下だ!あたしの店の前でくだらないことするんじゃないよ!さっさと行きな!」


マゼルダと呼ばれた女性はカウンターに立てかけてあった剣をすらっと抜き、男たちに襲いかかった。


「うわぁ!止めやがれ、この…!」


「やめて欲しかったらとっとと行きな!」


「くそっ…覚えてろよ!」


男たちは去って行った。


「あの…ありがとうございます」


と、サーラが恐る恐る彼女に声をかけた。

すると彼女はパッと振り向いてニコッと笑いながら、


「あらぁ、いいのよ、可愛いわねぇ。魔法使いかい?」


と、先ほどと打って変わった態度になった。


「いいえ、ファイターです」


「えぇ?!あんたが?こっちの男じゃなくて?」


「俺もファイター」


「見かけによらないねぇ」


彼女はサーラに夢中で、リューロの言葉を聞いていなかった。


「嬢ちゃん、ファイターならあたしの店においで」


「ありがとうございます。私、サーラといいます」


「サーラちゃんかい。可愛らしい名前だねぇ。あたしはマゼルダ。気軽にマゼルダと呼んでおくれ」


「あ、俺は–––」


「さ、サーラちゃんおいで。カウンターにお座り。–––ほら、さっさとどかないかこのデカブツ…」


マゼルダは完全にリューロを無視していた。

そして大きな男を立たせてサーラを座らせると、カウンターの中に入っていった。

椅子に座ったサーラの隣に立ったリューロはサーラにそっとささやいた。


「…俺、マゼルダになんかした?」


「してないと思うけど…」


「じゃあなんで無視されてんだろ…」


「さぁ…」


2人がぼそぼそ喋っていると、マゼルダに立たされた男とその仲間のやはり大きな男が大笑いした。


「マゼルダに無視されるのはしょうがねぇんだよ、坊主。あいつ男嫌いらしくってなぁ」


「そうそう、それに可愛い女の子が大好物でなぁ。だから余計に目に入らなかったんだろ」


「なるほどな。おっちゃんたちも嫌われてんの?」


「当たり前だ。あいつに好かれた男なんぞ見たことねぇよ」


男3人がゲラゲラと爆笑しているのを微笑みながら見ていたサーラの目の前に、綺麗な飲み物が置かれた。


「ほら、サーラちゃん。おごりだよ。さっきは怖かっただろ?」


凛々しく微笑むマゼルダに、サーラは慌ててしまった。


「いえ…!そんな、おごりなんて申し訳ないです!」


「そんなこと言わないでおくれよ。これはあたしがサーラちゃんのために作ったんだよ?」


「でも…」


「いいかい?これはお詫びなんだよ。あたしが管理してるところで起こってしまったことだから。だから受け取ってくれるね?」


「私………はい」


とうとう折れたサーラは男性陣が羨ましそうに見ているのを気にして、巨大なグラスの中の綺麗な液体をすべて一気に飲み干した–––その次の瞬間。