俺は全てを書き終え、がくっと項垂れた。
 何もかもが真っ白になったような気持ちになった。

 その絵が朝の日差しに照らされ、輝く。

 ……この絵は中野の絵だ。
 中野の存在がなければ生まれなかった絵。

 
 生きとし、生ける者の全ての俺なりの答えをこの絵に託し、そして愛を中野への想いと重ねながら描いた。

 
 その絵を美術室に俺は持っていく為に、いつもよりも早く学校へと向かう。

 教室に入ると奈津ももう学校へ来ていた。

 俺は吸い寄せられるかのように中野の目の前へと移動する。

「絵が完成した」

「……その絵、見ていい?」

「ああ」

 俺は中野の前でその絵を見せた。
 
 中野は表情を一切変えず、ただ俺の絵を見つめていた。


 やがて俺を抱きしめた。
 
 何かを感じ取ったんだろう。

 この絵は中野の心を描いた絵だから、心に通じたものがあったんだろう。

 
「ありがとう、ありがとっ……!」

 その言葉に何かが救われる気がした。

 

 きっと俺はその言葉を待っていたんだ。

  
 真っ直ぐな想いも
 真っ直ぐな考え方も

 全てが愛しかったから、描けた絵だった。