君色キャンバス

 
 ……意外と内容はまともだった。

 もっとインパクトのある内容かと思ったら、絵文字もギャル文字も顔文字も一切入っていない。

 
 男子ってこんなもん?

 普段見慣れている菜穂の絵文字使いまくりのメールからすると陳腐なもんだった。

 そういえば一之瀬君のメアド、私知らない。
 てかそれ以前に携帯を持っているかどうかも定かじゃない。

 まぁ一之瀬君は持っていなさそうだけど。
 
 なんとなく想像出来る一之瀬君の姿にふっと笑みが毀れた。

 

 とりあえず嫌々ながらも“北村優”を電話帳に登録する。


 再びベッドに横になり、携帯から手を離すとなんか変に心がざわつく。

 何かが呼んでるような――

 私は思わず部屋を飛び出した。

 12月の気候はあまりにも寒くてジャケットも着ずに飛び出したのは間違いだったと思う。

 吐く息は一瞬で白く染まる。



 
 * * *

 少し頭痛に襲われていた。それは長時間絵を描いていたせいだ。
 
 部室は静かで誰一人として喋らなかった。

 その空気に後押しされるかのように俺は自分自身の絵の世界にどっぷりはまっていたせいかこうやって絵を描き終えたらあまりの反動の大きさに体がついていけていなかった。



 体は鉛のように重い。
 何もする気にもなれない。

 俺は再び家のソファーにごろんと寝そべった。

 夕食なんぞ作る気も起こらないし、テレビをかけてもお笑い芸人が体を張って半裸状態で馬鹿やっている番組しかなかった。


 ……クソッ。

 ガンッとテレビにリモコンを投げつける。

 気分がイライラする。
 多分それは篠原先生の言葉のせい。

 
 俺の知らない父親の姿を篠原先生は語っていた。

 あの話を訊いてからもう余裕が無い。