浮かぶ光景は真っ白な雪だった。

 白く地面に落ち、溶けていく。

 それは鮮明に、そして冷たく解かされてゆく。


 君ならこの絵に何を描こうとするだろうか。


 ふと問いかけてみる。

 中野ならきっと……――


 
 * * *



 今日の夜空は星一つ無かった。

 私は頬杖をつき、夜空を照らす満月を見つめ、思わず時間を奪われた。

 一瞬一瞬が必ず輝きを持っている。

 何度も何度もその小さな温かさに触れ、私は詩という世界に想いを託していた。

 想いのまま、心のまま、溢れ出てきた言葉を書き綴る。

 
 それだけで何かが変わる気がしたんだ。


 今、一之瀬君はきっとキャンバスに自分の想いをぶつけているんだろう。

 私が詞に想いを託すように、一之瀬君は絵に想いを託すんだ。


 してることは違っても、考えてる事は一緒だよね。

  
 
 私も書きたい。

 自分なりの詞(ことば)を。