アイツはいつも俺の心の中枢部分に存在し、その存在を忘れさせない。
 
 まるで一種の呪いの様に俺を苦しめ続ける。

 いっその事こんな想いをするくらいなら、死ぬ方が楽なんじゃないのかとさえ思う。

 
 もう二度と純粋に絵を描く事なんて許させるはずもない。

 
 でも求めてしまう。
 俺の手が。

 どうしようもない想いが溢れ出して、過去と交錯していく。

 思い出す度に手が震える。


――『私が、一之瀬君の力になれないかな……?』


 中野の言葉に甘えそうになっていた自分があの時居た。

 中野が俺の力になるという事は、俺の過去を中野が知るという事。

 
 知ってしまったらきっと中野じゃ背負いきれない。

 
 いや、この世界全ての人間を探したって背負いきれない。

 俺だけに背負わされたもの。


 一瞬でもあの純粋な世界に還れたら――

 そんな想いを抱いてしまった。