中野の心の純粋さに触れる度に、自分の醜い部分が分かってしまう。
気付かれたくはない。
気付かせない。
どうすればいい?
俺は近くにあるあの絵を見つめ手がまた勝手に動く。
未来なんて夢なんて希望なんて見たくない。
だけど。
荒れる心を少しでも落ち着かせる為に、俺はあの絵に独りの少女を描く。
真っ直ぐな瞳を持つ少女が掴んでいるのは一枚の桜の花弁。
この少女は中野なんだろうか。
ふと問いかける質問の愚かさに、思わず吹きだす。
「馬鹿だな……、俺は」
出来上がった絵を真っ直ぐに見つめ、思わずソファーに項垂れる。
手が震える。
握りたい、そう思ってしまう。
筆先から伝えたい絵が俺の中で震えている。
時間なんか気にせずに想いのままに絵を描いてる時、本当に楽しくて目の前に映るのはただそれだけでしかなかった。
でも俺が絵を描く事がアイツの血のせいだと思うと悔しくてたまらない。