屋上から見える風景は、全てが好きだった。

 空、花、緑、大地、街。

 何もかもが色褪せない色を持っていて、輝いている。

 そんな光景を目にすると、不思議と何かを書きたくなる。

 私は持ってきたルーズリーフに、シャーペンで詩を書く。

 ありのままの想いを、心のままに書き綴る。

 そんな事を繰り返しているうちに入学当初に新調したファイルも、いつの間にかルーズリーフでぎっしりになり、重みを増していた。


「ずいぶん、書いたなあ……」

 そう呟く。 

 パチン、と今日書いた詩をルーズリーフを挟もうとした、その時だった。


 サァッと勢いよく風が吹いた。

 髪がぶわあっと風で舞い上がり、視界が見えない。


 やっとの思いで、視界を確保するとルーズリーフが1枚も無い。きれいさっぱり。

 キョロキョロと辺りを見渡すと、何枚かは屋上の隅に落ちていて、ばっと拾い上げた。

 だけどその枚数はあんなにあった枚数よりも、はるかに足りない。

 恐る恐る屋上から見える、グラウンドを見た。

 そうすると案の定下には何枚も落ちていて、グラウンドを占拠している部活動生でざわついていた。

 最悪。

 はっきり言って、最悪の何者でもなかった。

 どうしよう。
 焦りで心臓がドクドクと波打つ。

 下を見ると私を指差す人もいて、思わず屋上から逃げるように走り去った。


 最悪、最悪、最悪。 

 繋いで来た想いは、一瞬にして跡形もなくなった。


 しかもあんなにざわついていたんだから、きっとあの詩を読んだんだ。

 明日はきっと笑い者になる。