今の授業は国語。

 今時珍しいテープレコーダーからは、少し雑音交じりに教科書の本文が流れ出ていた。

 埃をかぶっていまにも壊れそうなテープレコーダから、流れる音声はひどく聞きづらい。

 聞いているだけで耳が痛い。


 でも5時間目の授業となれば本気でこんなのを聞く人は大抵少なく、周りを見渡せば大半は教科書を立て、机の上で突っ伏した状態が広がっている。

 先生もそれを怒ろうとはせず、ただ次の授業で使うプリントをパソコンで打っていた。

 カタカタと慣れたキーボードの音だけが、教室内に響いてく。

 そしてやっぱり一之瀬君は、教室の窓を見つめていた。


 やがてチャイムが鳴り、何かから解き放たれたように一斉にみんな目を覚まし、号令がすむとがやがやといつものように活気を取り戻す。

 ほんと、みんな調子がいいとつくづく思う。


* * *


 放課後。
 私はいつものように部活へと足を運ぶ。

 部活は文芸部。

 部員はそこそこ多いが、部活に来ているのは半分くらい。

 その半分でさえ真面目に部活をやる人は少ない。

 実際は、携帯をいじったり宿題をしたり。
 いちゃつくカップルだっている。
 

 そんな中、私は集中出来るはずもなく、そのまま屋上へと向かった。