春――


 巡る季節の流れは早くて、あの高校生活の最初の幕開けを見届けてくれた桜の木を見るのも今日が最後。


 
 私は卒業式が終わり、卒業証書が入った筒を片手にいつものメンバーと一緒に他愛のない会話を繰り返していた。



「はー明日からあたしたちあの校舎に入れないんだよね~~」


 菜穂が校舎を見ながら悲しげに言う姿に、“送り出す側”から“送りだされた側”になったことの重さを知る。


 そっか……


 今日で高校生活も終わり。



 3年間なんてあっという間だった。

 いつもいつも流れに任せて進んでいく1日が今となってみれば凄く貴重だったんだって気付かされる。



 この紙切れ1枚に“卒業”という重みを託されて、なんだか言葉に詰まる。