正義を振りかざすだけじゃあ一之瀬君は救えない。

 
 じゃあどうすれば……いい?



 一之瀬君の為にどうすればいい?

 


 ふと自分の視界に目に入ったのはハサミ。

 そのハサミを私は手に取って、勢いよく長い髪を切った。


 
 バサッと一気に落ちた髪。

 一之瀬君の目が私に再び向けられた時、何もかもが見えた。




「私は“過去”を捨てる! 一之瀬君の為に生きたいのっ!」



 世界中でたった一人の“あなた”――。


 私には過去も未来もきっと今も平等ライン。

 幸せなんかいらない。


 そんな感情に左右されてこれからも生きてくくらいなら、たった独りの愛しい人の為に私の命を捧げたい。

 

 ずっとこの先も――。




「一之瀬君が好きだから……」