「そんな回りくどくしなくても、はっきり聞いたら? 
 俺の……父親の事、知ってんだろ?」


「中野はまだ知らない。
 だからここにあえて連れてきたんだ」


――……?!


「一之瀬も知ってほしい真実がまだあったから」

「あれ以上に何があるんだ」

「きっと知ったら一之瀬は幸せになるから。言いたくなかった」




「っ……、もう俺は何も聞きたくない!

 
 正直真実を知るたびに胸がつっかって、しんどくて苦しくてもう限界なんだよ!

 幸せとか不幸とかそんな感情、もう知りたくない。
 
 触れられたくないんだ!」



 感情よりも先に言葉が出た。

 それは“逃げ”――。


 
 今、変わっていく状況に俺はもう手に負えなかった。