君色キャンバス


 俺は榊原さんがくれた携帯を取り出すと、案の定榊原さんや色々とお膳立てしてくれていた会社の人からの電話やメールが殺到していた。

 
 その一つ一つにはちゃんと“俺”は存在してるのだろうか。

 俺をただの商品だと売っている目にはもう耐えられない。


 好きなはずだった絵に色々な人から批評され、「ここをこうしたらいい」、「こうしたらよくなる」と決め付けられ俺の絵じゃなくなる。


 それが現実なんだと榊原さんには諭されたけど。

 
 
 俺はやっぱり小さな絵を。

 誰からも賞賛されない絵でもいいから、自分の絵を描いていたかった。




 中野に逢いたい。

 それは勝手な俺の押し付け。


 中野はきっとここには来ない。





 携帯を俺は近くの川原に投げ捨てる。

 そのうち携帯の電波でここにいることに気づかれるはず。


 俺はもう二度とこの場所には帰ってはこれない。