私はいつものように学校へと行く。


 正門を通り過ぎ、校舎へと入ろうとした時に菜穂が私を見つけると手をぶんぶんと大きく振っている。


 なんでだろ……。
 この光景が凄く凄く……遠い――。


 
 何で私、また同じ日を繰り返そうとしてるの?



 ばっと後ろを振り返る。

 やっぱり何もそこには無くて。


 あるのは確かに“今”っていう瞬間。


「……はよ」

「…………っ」


――北村君……。

 昨日のメールが脳裏によぎる。

 北村君にはやっぱり顔を合わしたくは無かった。


 結局昨日のメールも返信出来なかったし。


「そんな顔しても一之瀬はいねーよ」


 北村君は私の心を見透かし、吐き捨てるように言うと黙ったまま私の顔を見ていた。


 私の次の言葉を待っているかのよう。


「北村君は……」


 次に言おうと決めた言葉を押し殺す。

 言っても何もならない。


 今更私が北村君に言ったところでなんにもならない。