突然部室の扉が開いた。
 
「……失礼ですが、貴方が中野さんですか?」

「は、はい」

「昨日屋上に居たのは、中野さんですよね?」

 いきなり知らない人からそんな事を尋ねられて、肯定する事も出来ず、蒼白した。

 あの姿を見られていた……?

 どうしよう。

「あの、勘違いしてませんか?」

「え?」

「僕は中野さんとバラす事を望んできたのではありません。僕が望んでいるのは、これです」


 そう言って渡されたのは校内新聞だった。

「ここのページに中野さんの詩を書いて頂きたいんです」

「は、はあ」

「お願いします!! 貴方の事は貴方が望むのなら、一切公表しませんからっ!」

 そう言って頭を下げた。

 その瞬間一之瀬が口を開いた。

「あのさ、なんで中野なの?」

「中野さんしか、この担当は出来ないと思ったからです」

「そういう事を言ってるんじゃない、そう思った動機は何なんだよ」

「君も本当は知ってるんでしょう? 中野さんの詩の深さを」

 そう言った瞬間口を噤んだ。

 私は思わず「あの」と躊躇いがちに言葉を発した。

「何ですか?」

「……ちょっと考えさせてください」

「そうですか……。
 いきなりすぎましたね。……また来ますので」

 そう言ってまた頭を下げて、部室から離れた。