「岩橋、2分23秒!」

ピッとタイマーをきる。

やっぱり一番に帰ってくるのは岩橋くんだ。

しかも、前よりもタイムがのびてるなんてすごいな。

岩橋くんは帽子をとって、

「ありがとうございます!」

と礼をしてくれる。

そして、横で肩でおおきく呼吸しながら、動かなかった。

「大丈夫?しんどかったりしたら…」

私が言いかけたところで、岩橋くんは無理やりの笑顔でニコリと笑って、向こうへかけてく。

大丈夫かな。

前みたいに倒れたり……。

心配になって、岩橋くんの後ろ姿を見つめてると、次の人がやってきた。

「村本、3分58秒!!」

私はタイムを読み上げ続けた。




ちょうど、最後の人が戻ったところで、

「だいちゃん!?大丈夫?!」

と大きな声が聞こえた。

だいちゃん……?

私はその場へ駆け寄る。

!!

岩橋くんがベンチに倒れるように座っていた。

息は荒く、顔は真っ赤。

そばには紗友ちゃんがいた。

「ちょっとぉ!あんたなにしよっと?マネージャーやけん、ちゃんと体調もみんといけんやろ?!」

紗友ちゃんは私に向かって、そういった。

そのとおりだ。

どくん……。

「羽美ちゃんモタモタしてないで、岩橋を保健室つれてって。」

ゆら先輩に指示されて私は岩橋くんと肩をくむ。

ズッシリとした感じが私を焦らせる。

「羽美ちゃん大丈夫よ。」

ゆら先輩はなにかを読み取ったかのように優しい笑顔で笑った。

私は岩橋くんを連れて、保健室まで歩いた。

「ごめんな、望月……。」

絞り出すように岩橋くんは言う。

「こちらこそ、ごめんなさい。」

私はそういって、保健室のベッドに寝かす。

ユニフォームをぬがして、体操服に着替えさせる。

そして、冷やしたタオルを首やらにまいて、寝かした。

「ふぅ……。」

「あ、りがと。」

岩橋くんはベッドのなかで私を見上げた。

ドキン。

なんか、かっこいい。

「ううん……」

私はそう言って、保健室をでた。



廊下を長く歩くと、人影が見えた。

「さ、紗友ちゃん……。」

「そんでもマネージャーのつもりなん?」

そのとおり。

あぁ、情けないな。

「すいません、私はまだ何もわからなくって。でも、野球部を支えていきたいの。1人の部員として頑張りたいの。教えてくれてありがとう。」

私は深々と紗友ちゃんに礼をする。

「ふぅん……。ねぇ、あたし達友達にならんかな?」

可愛く首をかしげる、紗友ちゃん。

とも、だち?

えっと。

それは大歓迎で、す。

「うん、いいよ。」

私もニコッと笑って見せた。

そして、紗友ちゃんは不敵な笑みを浮かべて、

「じゃあ、私の恋も応援してくれよるよねぇ?」

と言う。

恋……?

「えっと、うん!そりゃもちろん。」

私はこくこくとうなづく。

「やったぁ!私の好きな人、だいちゃんやの。いろいろ相談のってね!またね。」

それだけスラスラと話すとそのままグラウンドに戻っていく。

モヤモヤ。

また、でてきた。

モヤモヤ。

つまり、紗友ちゃんは岩橋くんが好き、ってこと?

なんか嫌だ。

応援……できるのかな。

胸が苦しい。