望月 羽美。

羽を広げて美しく飛べますように。

と名付けられな名前。

名前負け、してるな。

って時々おもう。

小学6年の夏に見た。

甲子園。

真っ青な澄み渡る空と白いボール。

泥まみれになりながら汗をながす男達。

吹奏楽の響き渡る演奏。

すべてが輝いてみえて。

中学になったら私も輝きたい、そう思ったんだ。

中学になって、野球部に入部した。

多分、私だけが初心者で。

野球部って厳しくて途中で辞めそうになったけど最後まで踏ん張ることができたのは、自分の夢があったから。

大きな試合こそは出れなかったけれど、夢へ1歩近づいたような気がした。

そして、また。

私には夢ができた。

野球の強い高校に行って、生で甲子園をみるんだ。

ーー

さぁ、今年もこの季節がやってきた。

青く澄み渡る空。

あたたかな太陽。

フワフワの風。

うん、春だ。

入学式だ……。

友達できるだろうか。

まっすぐに伸ばしていた黒髪は肩より少し下まできって、高校生になるからお化粧も少しがんばってみた。

晴聖高校。

1年生。

第一希望で受けたこの高校。

野球も吹奏楽も強いって有名。

「ねーねー、君なんてゆーの?」

びっくりした。

急に話しかけてくるから。

眩い金髪。

キラキラと太陽に反射するピアス。

こわいな。

こんな人がいるん、だ。

私に声をかけた男の人は期待を含ませた瞳で私を見る。

「かわいいね、お人形さんみたいだな」

確かに晴聖はチャラい人が多いかな。

私は焦って、どんな反応をしたらいいかわからなくなった。

「あ、…なま、えは…「言わなくていーからねん。」

目の前に突如、出現した女の子。

茶色っぽい髪を高くポニーテールにして、スカートが短い。

「あ、城山 凛ちゃんだー。知っとる知っとる有名だよねー」

しろやま りん ちゃん?

「あんたらさっさとどっか行ってよ?」

女の子とは思えない口使い。

「ほら、あんたも行くよ。」

しろやま りんちゃんに手をつかまれてスタスタと歩いていく。

「ごめんねー、こわかったでしょ。晴聖高校にはあんなやつがいっぱいおるからねん。」

ブンブンと、小さく首をふる。

「どうして、晴聖高校にしたの?なんかもっとお嬢様てきなとこに行ってそうなのに。」

しろやま りんちゃんは可愛い笑顔をみせる。

「野球がしたくて……。」

私が小さく答えると

「あー!なるっほど!すごいね!?そいえば、名前教えてくんない?あは!」

いいなぁ。

夏みたいな人だ。

色でいうのならオレンジ色。

フルーツでいうならオレンジ。

見た目からして明るくて活発で。

私はすぅ、と息をすって

「望月 羽美です。」

「へーっ、羽美ね!かわいー名前!私はね〜城山 凛っていうの!」

「うん、ありがとう。」

なんだか照れるな。

「羽美よろしく!」

二カッと笑う凛ちゃんはとってもかわいくて私もなりたい、そう思った。