狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-

「いえ、別に。
失礼ですが…人違いでは？時間がないんでこれで…」

足早に去ろうとする彼の肩を、大神カチョーが少しだけ乱暴に掴んだ。


「トボけるなよ……」

トーンを落とした低い声が、はっきりと聞こえた。

平田さんがギョッと目を見開いた。

「あなたが平日の昼間っからどこで誰といちゃつこうと勝手ですが。

ウチの大事な女子社員を……
あの子を泣かさないでやって貰えませんかね？」

寺田さんをじっと見下ろすその表情は、笑わぬ顔で笑っている。

平田さんが、あんぐり口を開けていた。同じく私も、あんぐりと口を開けている。

聞いてないフリをしながらも、多分課の皆が聞いているだろう。


「……君ぃ、何かしたの？」

彼の上司が眉を潜めた。
それには答えず、彼は冷ややかに嘲笑った。

「大神さん。貴方にだけは言われたくないな。それよりも……いいんですか？今の仕事、貴方の部下が困ることになりますよ？」

隣で青くなっている平田さんをチラリと見やると、くっと唇を歪ませる。