オオカミさんの胸の中は、ほんの少し息苦しくって、それ以上に心地よい。

「カチョーが……あったかい」
「そうかい」

トントンと大きな掌が私の背中にリズムを刻む。

今なら……言ってもいいよね。
酔った勢い。
酔っ払いの戯れ言だときっと聞き流して貰えるから。

いつだって照れと意地が邪魔をして、決して言えない本心を。
慕う気持ちの大きさを……

少しだけ甘えた声で、私は小さく囁いた。

「カチョー」
「ん?」

「…私ね、本当はカチョーが大好きなんです。もうずうっと前から…」


手が止まった。

少しだけ間が空いて。 

柔らかくて深い声が頭上に心地よく響く。

「不誠実な女ったらしは、キライだって。いつも言ってただろうがよ…」

頭が寄せられているスーツの胸元で、私はフルフルと首を降る。

「…だってカチョーは……私が困ってる時にいっつも助けてくれるから。

たまにだけど、とっても優しい綺麗な目で笑いかけてくれるから。

女好きの女タラシだけど…“不誠実”とはきっと違うから…
私がもっと……ふわぁ…」

イイ女だったらなぁ。

ああもう、ボンヤリしちゃって上手く言葉が出てこないや。