狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-

十数秒の間___

私は瞬きすることすら忘れ、彼の両腕に捕らわれたままでいた。
包み込む体躯の大きさに、すっかり圧倒されてしまっていた。

「……全く君は。俺を一体何だと思ってるんだ」

私の涙がピタッと止まったのを見てとると、彼は腕の力を少しだけ緩め、もう一度私をふうわり包み直した。

「……分かったよ。君と寝よう」

ヒクッ。

声の替わりに、喉から変な音が出た。
彼の手が背中を一撫でしただけなのに、急に怖気て身体が震えた。

それを見てとったのか、彼はフフッと柔らかに笑んだ。

「ただし。
君の考えてるようなのじゃない。
そのまんま、抱いて寝るだけ。意味は分かるな?」

今さらながら、ホッと安堵の息をつく。
 
ぎこちなく頷くと、彼は私を抱きかかえたまま、ゆっくりとベッドに横たわった。

彼はスーツ姿のまま、私はコートも着たままで。

不思議な感覚。

足元の毛布を片手で掴むと、互いの肩まで引き上げる。
ひんやりと冷たいベッドのシーツを、2人分の体熱がじきに暖めた。