狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-

昼食の後。

「北国に2週間だぜ?アッチはもう雪まで降ってんの。それがまた寂しい宿でさ、寒いの苦手なんだよな、俺…」
「いいなぁ、風情があって。私はそういうの好きですけどね」

「そう。じゃあ……次は一緒に行く?」
「バカな!」

すっかり元気になった私は、他愛ないお喋りをしながら、来た道をユルユルと歩いていた。
 
ふと町並みに目をやると、どことなく寂れた裏通り。
夜にはきらびやかな繁華街も、昼間に古びた汚れや壁の亀裂がお日様の下にさらされる。

いかにも起き抜けと言った風の女が、眩しげに顔をしかめながら、電柱脇にゴミを捨てて去っていく。
と、それを待ち構えていたカラスが、すぐにそれをつき破って道にゴミをバラまいた。
 
昼間に見る夜の街は、芝居がはねた後の舞台のように、どこか儚く物悲しい。


隣で笑う大神カチョーをチラと見る。
一見して完璧に見える彼。

天性のものはあるにせよ、
その表情や目の運びや
訛りを消し去った言葉遣い、
ムダなく適度に鍛えた体つきとか、
清潔感のあるスタイルは、
恐らく後天的に身に付けていったものなんだろう。

偉いなあ、私なんか生まれたまんま、素だもんね。
 
人って一体、一生のうちにどれだけの飾りバネを身に付けていくんだろうか。

目指す姿と自分とのギャップが大きいほどにそれはきっと重たくて、時には膨れ上がった自分に押し潰されてしまうほどに___
 
なーんてね。

つい柄にもなく、感傷的になってしまった。