狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-

前の彼女さん、かな。

心にモヤっと不安がよぎり、それを慌てて否定する。

わ、私は別に気にしてないよ?
うちにもまだ、ハヤト君が写った写真飾ってあるし(集合写真だけどね)…

でも、ここに落ちてるってことは、もしかして最近見てたりしてたってこと……かな?

と、キッチンから戻ってきた彼が、私の手からそれをスッと奪いとった。

「何見てるの?」
ニコニコしながら、寺田さんがコーヒーを乗せたトレイを置いた。

「あ、あの、落ちてたから。
えっと、あ、私前に行った事があってですね…その…前の彼女さん
……ですかね?」

彼の顔が一瞬強張ったかに見えた。

が、すぐにいつもの笑顔に戻ると、それを懐かしげに眺めた。

「……ああ。北海道にいたときのね。遠距離でしばらく続けてたけど……
これは……もういいんだ」

と、次の瞬間。

「え?」
私はビックリしてしまった。


彼がその写真立てごと、ガサッっとゴミ箱に突っ込んだのだ。

な、何かマズイこと聞いちゃったみたい。私は慌ててフォローした。
 
「だ、ダメですよ~、写真立て捨てたりしたら。思い出は大切にしないとネ……」

私がコタツから半身を出し、それを拾い上げようと、ゴミ箱に手を伸ばした時だった。