狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-

好きかって、寺田さんのコト?

狼狽えた私はつい目を逸らした。
「そ、そんなの。
……決まってるじゃないですか」

「本当に?」

「モッチロンです!」

ムキになって告げた答えに、彼はひとたび間をおいた。

「そっか……まあ、それならいいや」
独り言のように呟いた。

それから何故か___

あの、たまにだけ見せてくれる
堪らなく優しい微笑みを浮かべたんだ。

「オオカミさ…」

けれどそれは、あまりに短い間だった。



「さてと。じゃ俺ソロソロいくわ」

彼は勢いをつけて起き上がると、パンっとジャージの皺を伸ばした。

「アリガトな。
赤野の膝は柔らかくてよかったよ。
俺は好きだけど……もうちょっと絞った方がいいかもな」

ニヤっと意地悪く笑った。 


「な、何を!」


反撃しようとした途端、
「じゃあな、2週間サボるなよ~」
彼はヒラッと手を一振りし、颯爽と走り去った。


「この……このセクハラオヤジが~~‼」

逃げゆく背中に悪態をつくと
怒りながら私もベンチから立ち上がった。


マッタク、エロ上司め。
恋愛まっただ中、おデート前の私に
お膝枕だなんてさせて……

『好きか?』なんてシリアス顔で訊くもんだから、ちょっとドキッとしちゃったじゃないか。



でも、あの笑った一瞬だけ

彼が淋しげに見えたのは

私の、気のせいだったのかな……