狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-

「ご、ゴメンなさい寺田さ……」
 
オロオロと離れようとした瞬間、肩に回された彼の手に、ぐっと力が籠められた。

びっくりして見上げると、彼がスッとメガネを外し、ニコッと笑んだ。

「赤野さんは、意外と積極的なんだな…」

セッキョク?……
ホケッと見上げ、吊られて私も微笑んだ時だった。

「寺田さ……ん……」

彼の薄目の唇が、そっと私に触れた。

見開いた目を慌てて閉じると、彼は私の身体ごと、自分にぐっと引き寄せる。


もしかしてちょっぴり手、早い?

けれど、戸惑う気持ちより、別な気持ちが先に立った。

私はもう、誰かさんの時みたいに“幼い”と見られたくはない。


秋月の下、爪先立ちに抱き締められながら、口内に深く侵入してくるキスを、気がつくと私は精一杯に受け止めていた…

 
「おやすみ」
「オヤスミ……なさい」

悪戯っぽく笑んでから帰って行く彼を、私は惚けて見送った。


嘘みたい。

キス…しちゃったよ

寺田さんと。

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