「例えばこんなふうに…」
「いっ?」

彼の指が、私のハイネックのセーターの襟をソッと降ろした。
目を細めて妖艷に笑む。

「俺は……赤野さん、云うほど鈍感じゃないと思うけど?」

言うや否や、剥き出しになった首筋に顔を近づけて唇を圧し当て、そこを強く吸い上げた。

「……ふぅっ…あ」
 
1、2、3……
しっかり押し付けて、サッと顔を上げると、彼は“どうだ”と言わんばかりにニッと笑った。
 
「な、ななな、何を⁉」
ワタワタと慌てる私を尻目に、身体を起こし、パッと私の上から退く。

「バ~カ。さっきのお返しだ」


…………してやられた。


私はプンスカ怒りながらも、カチョーに水を汲んで渡した。
「ちゃんと飲んで、寝てくださいね」
「分かってるよ」

「絶対ですよ?」
「分かったから。早く帰れよ」

「では、よいお年を」
「じゃあな、また来年」

私はまだ、カッカしながら帰路につく。

真冬の冷たいビル風は、却って心地よく身体の火照りを冷ましてくれた。
 
全くさ。
いつも私をコドモ扱いする癖に、自分だってコドモみたいじゃないか。

その癖、あんな際どいコトするんだから…

首筋のキスの跡がズキッと疼いて、無意識にそこに手をやった。


も~っ、バカバカっ。

オオカミさんのバカっ‼



ちょっとだけ……キタイしちゃったじゃないか。