彼の指は、私のハナをギュウっと摘まんでいた。

「ぶ、ぶはあっ…な、何をするんですかっ!」

バっと彼の手を払い退け、ハナを押さえて抗議する。
 
「ハっハっハ…バカめ。ちょっと期待しただろ?」
「ば、バカな!」

彼はフッと頬を緩めた。

「赤野、いいか?『いかのおすし』だ」
「イカ……そ、それは一体…
何かとてつもなく、アダルトな隠語なのでしょうか?」

「違うっ!
何だ知らないのか……
知らないオジサンには、菓子を貰ってもホイホイ着いていっちゃダメ”って意味だ」

小学生の防犯標語じゃないか!

「で、でも……カチョーは知ってるオジサンですよ?」
私のささやかな反撃に、彼の額にピキッと青筋が浮かんだ。

「オジサンじゃない!まだお兄さんだ。
いいか?知ってる人でも、お兄さんはダメだ。悪いイタズラをされるからな」

「………はあ、そこですか」


呆れ返ったその時だった。