誘う幻想 ノーカウント37

「置いていかれちゃったねぇ」

「先に行ってもらっただけだ」

果島はきっぱりと言った。隊長が僕らを見捨てるわけがない。絶対に合流して、政府の核を潰すと信じている。

「そう、じゃあ絶望しちゃう前に消してあげる」

果島に銃を向ける。そして、引き金を引いた。
果島は避けて、糸と針を持った。

「君の行動、少し借りるよ」

床を蹴り、高く飛ぶ。そして、空中に糸を通した。

「うっ!?」

糸を通したことで、果島の操り人形になったのだ。玉止めをすれば果島が糸を切るまで従うことになる。

「……効かないよ」

糸はプツッと切れた。歯で噛み切られたのだ。対象の頭上から糸が下りてきて、手足に絡む時が一番切られやすい。

「動けなくするしかないね」

果島が糸切れを投げると、花彩は槌で叩きに行く。糸が使えない場合、糸切れを投げるから槌を使ってくれと、ここに来る前に言っていた。

「遅い!」

咄嗟に避けた。弾は腕をかすり、服に傷がついた。
果島と比べると動きが遅いことに気付かれ、花彩は狙われる。

体力も無いので、いつかは力尽きたところを撃たれるだろう。弾を槌で防いだり、果島が糸を通して少しだけ動きを止めてきたが、もう限界だ。果島も少し傷を負った。

撃たれることを覚悟して、接近するしかない。

くるりと反転し、最後の力を振り絞って走る。

「これで終わりね!」

撃たれる……そう思った。体が勝手に動いた。

槌で撃ち返し、驚いたところを叩く。力を奪ったからきっと、まともに狙えなくなっているだろう。

果島が念のため糸を通し、今度は玉止めをする。銃が使えなくなり、ショックで抵抗できなくなっていた。

「やることが終わったら解放しますね」

針を仕舞った果島が笑顔で言った。果島たちはその場を去る。花彩はちらっと見た後、去って行った。

糸を通され放置されるので、味方が来るのを待つか、果島たちが終わらせるのを待つしかない。
味方が来る可能性も低い。きっと、エレベーターが止まるのを待っているから。

「まさか放置するなんて……人は見かけによらないわ」

見た目も強くなさそうだったし、やることが終わったらと笑顔で言っていた。ついてきた花彩も臆病な性格だと思っていた。
あぁ嫌だと、放置されたまま呟いた。