初めて疫を奪ってから、私は風邪をひきにくくなった。前はもっと体調を崩すことが多かった。
疫を奪い、世界を綺麗にしたからかな。そう思った私は男に指示された通り疫を奪い続けた。すると逆に体がだるくなってくる。

「今度は鈴鹿 明瑠から疫を奪え。奪うときは、あのピンク色の薬品が入った試験管を狙え」

男の話によると、鈴鹿という人は世界に疫をばらまいているらしい。そんなの許せない。きっと、私が体調を崩したのはあの人のせい……怒りを込めて杖を向ける。すると、ピンク色の薬品が吸い取られていく。

「うっ!」

途中で、体に激痛が走る。立つこともできなくなりその場に倒れこんだ。

「ありがとう。これで君は用済みだ」

男は笑って、去って行こうとする。

「どういうこと……」

「吸い取られた疫は、君の体に溜まっていたのさ。そして君は死ぬ。でも、世界の平和は保たれた」

真っ暗な空間が裂けて、私を地面に落とす。落ちる時のゆっくりとした時間で見たのは、初めて疫を奪った子のところだった。