「おまたせー!最初の曲、いっきまーす!」

歌うだけでなく、踊っている。私だったら息が続かないなあ。

「えっそんな遠くから来てくださったのですか!?ありがとうございます!」

歌い終わった後もファンの人と話している。引っ込み思案な私には出来ない。
憧れているくらいがちょうどいい。私には向いていない。もっと目立たなくて、安定した職業にしないと……

会場から出て、元の場所に戻る。

「どうだった?」

「凄いです……やっぱり、私じゃ無理ですね」

でも、一人の時に歌うくらいは許されるはずだ。そっちの方が緊張しないし、批判もされない。好きな曲を歌える。

「なれる方法があると言っただろう」

私はハッとした。

「これを使うんだ」

棒を渡される。群青色の棒……これを何に使うんだろう?