誘う幻想 ノーカウント37

私は導かれるかのように時計塔へと向かっていた。そこにあの二人がいた。
木の陰に隠れて様子を見る。

「実は、君にプレゼントしたいものがあるんだ」

「何ですか?」

笹木さんは前見た時と違って嬉しそうにしていなかった。私のせいだ……好きじゃなくなったんだ……

「ごめんなさい……あなたの事、爆発してほしいなんて思ってません……!」

涙がこぼれ落ちた。その時、手紙がすっと現れた。

「破ったはずじゃ……」

手紙は涙を吸って、くるくると回り始めた。すると……

「何で、何でそんなことを言うんだ……!」

泣いている男の人の方に飛んで行って、手紙からはみ出ているちぎれた赤い糸が、その人の涙を受け止めた。

「……!どうしたのですか!?」

糸は元通りになって二人を結んでいる。そっか、あの糸は運命の糸なんだ。切られたって負けないんだ……!

「このコート、私が欲しかった物……!」

「似合うと思って買ったんだ。政府から逃げながら……」

「ありがとうございます!」

よかった。二人とも本当に幸せそうだ。さて、私は去ろうかな。
ひっそりと離れた時、ゾッとした。

「余計なことをしやがって……!」

殺される!逃げなきゃ!
ああ、帰りたい。元の世界に帰りたい。死にたくない!

上から何かが振りおろされる。きっと刃物だ。

「やめなさい!」

振り返ると、笹木さんのグループのメンバーが男の手から刀を奪った。

「これ以上、人を傷つけないで」

「もう美貴達が悲しんでいるのを見たくないの!」

「未成年にまでこんなことをするなんて……許せませんねぇ」

助かった。けど、今度はこの人たちが危ない!
私はレターオープナーを構える。男の手紙を開けて、破った。
男の姿は六角形になって消える。これで、終わったのかな?