私は導かれるかのように時計塔へと向かっていた。そこにあの二人がいた。
木の陰に隠れて様子を見る。

「実は、君にプレゼントしたいものがあるんだ」

「何ですか?」

笹木さんは前見た時と違って嬉しそうにしていなかった。私のせいだ……好きじゃなくなったんだ……

「ごめんなさい……あなたの事、爆発してほしいなんて思ってません……!」

涙がこぼれ落ちた。その時、手紙がすっと現れた。

「破ったはずじゃ……」

手紙は涙を吸って、くるくると回り始めた。すると……

「何で、何でそんなことを言うんだ……!」

泣いている男の人の方に飛んで行って、手紙からはみ出ているちぎれた赤い糸が、その人の涙を受け止めた。

「……!どうしたのですか!?」

糸は元通りになって二人を結んでいる。そっか、あの糸は運命の糸なんだ。切られたって負けないんだ……!

「このコート、私が欲しかった物……!」

「似合うと思って買ったんだ。政府から逃げながら……」

「ありがとうございます!」

よかった。二人とも本当に幸せそうだ。さて、私は去ろうかな。
ひっそりと離れた時、ゾッとした。

「余計なことをしやがって……!」

殺される!逃げなきゃ!
ああ、帰りたい。元の世界に帰りたい。死にたくない!

上から何かが振りおろされる。きっと刃物だ。

「やめなさい!」

振り返ると、笹木さんのグループのメンバーが男の手から刀を奪った。

「これ以上、人を傷つけないで」

「もう美貴達が悲しんでいるのを見たくないの!」

「未成年にまでこんなことをするなんて……許せませんねぇ」

助かった。けど、今度はこの人たちが危ない!
私はレターオープナーを構える。男の手紙を開けて、破った。
男の姿は六角形になって消える。これで、終わったのかな?