誘う幻想 ノーカウント37

気付かれないように追いかけて、着いたところは古い建物だった。高い塀や鉄の門があって猫が出られそうには見えなかった。

「すごい広い……こんなところに住んでるの……?」

中に入っていくのが見えたので門のところを見てみる。門には001代理国保健所と書かれていた。
門は特別な何かをセンサーにかざさないと開かないらしい。指紋はもちろん駄目だった。

「どうすれば……そうだ、魔法の猫缶とか……」

魔法の力でいけるかもとふざけて猫缶の底をかざす。すると……開いた。そのまま中に入る。中は意外と新しく見える。部屋が多く、どこにあの子がいるかはわからない。とりあえず右の部屋の扉を開けてみる。

ケージがいっぱいあって、中で犬や猫がぐったりしている。もしかしたら、他の部屋も同じように……何でこんなことに……
この部屋にあの子はいなかった。皆出してあげたかったけど、私にはできない。

6つ目の部屋で、あの子が見つかった。

「大丈夫!?今出られるから!」

私がそう言うと反応してくれる。猫缶の底をかざそうとした時、私は家で猫を飼えない事を思い出した。もし、連れて帰ったとしても飼えなければこの子はどうなるの?また、保健所に来るの……?私は、この子を飼えるの?