誘う幻想 ノーカウント37

「あ!いた!探しましたよ!」

黒い服を着た男の人が走ってくる。

「まさか少し出かけた隙に逃げられるとは……」

「あなたがこの子の飼い主さんですか?」

猫を抱っこして確認してもらう。抱っこされるのが嫌だったのかシャーと威嚇している。

「はい、見つかってよかったです!」

そっか……飼い猫だったんだね……短い間だったけど、一緒にいられてよかった。

「見つかってよかったね。さようなら……」

「ニャア……」

飼い主さんのところに戻れるのに、悲しそうに鳴いた。飼い主さんとあの子は帰っていく。
あの子……どこに住んでいるのか気になる。猫が逃げられるような家……もしかしたら今度家出したとき事故に巻き込まれたりするかもしれない……このままじゃ良くないって飼い主さんに教えなきゃ。
家に帰る飼い主さんを追うことにした。