あの人が私に向かって歩いてくる。

「君は……?」

「ごめんなさい!槌で叩いて……これで、あなたの性格を……」

割れた槌を見せる。そして、槌の事を説明した。

「この模様、政府の……明瑠から連絡があったけど君も奪う者に……」

槌の側面の模様を見てそう言った。

「君がしたことは、国民を苦しめる結果になったかもしれないのは分かってる?」

私は、うんと頷く。人を傷つけて手に入れた優しさはきっと、本物の優しさじゃない。

「してはいけない事をしてしまったかもしれない。でも君は、直前のところで勇気を出して槌を捨てた。それは凄いことだと思うよ」

凄いこと……何もできない私が……この一言で、今まで悩んでいたことが消えうせた。

よく考えたら、顔だって同じものはない。これも個性なのかもしれない。

「政府は……諦めたのでしょうか……?」

「まだ諦めていないと思うよ。だから、君にも協力してほしい」

私の答えは、もちろん……

「はい、絶対……政府の思い通りにさせません!」

私には性格に個性がない。だから、今から自由に個性を生み出せるはず。そして、今度こそ本当に優しい人になるんだ。