私は確かに、人の気持ちを考えるようになり、優しいと言われることが多くなった。男が、もうすぐ元の世界に帰ると言った。でも私はあの人の事が気になって、帰る１日前に偶然見かけたあの人の様子を見に行った。
人通りの少ない場所で、誰かと話している。話の内容は、政府がお金を国民のために
使っていないことを隠すために、国民の気持ちを操れと……
こんなことになるなんて……どうしたら元に戻せるんだろう？

でも、元に戻したら……自分は……

優しい心を手に入れた自分は、元に戻した方がいいと言う。でも、元の自分だったら……

「どっちにしても、自分の行動だよ。」

誰かの言葉が頭に入ってきた。今の自分が元に戻したいと言っているんだ。そうする以外にない！
槌を投げ捨て、私は今の自分を捨てた。槌から光る何かが飛んでいく。その一つはあの人の方へ行った。

「うっ！」

あの人はしゃがみこんでしばらくすると立ちあがった。

「やっぱり僕、やりません」

最初は相手の人が文句を言っていたけど、しばらくすると去って行った。