迷走女に激辛プロポーズ

「思っていたより、まともな所に住んでいたんだな」

失礼な奴だ。いったいどんな所を想像していたんだ?

「だから更新満期まで居たかったのに……」

嫌味を込めて言ってやる。

「けど、家賃が発生するぞ、勿体無いじゃないか。どうせ俺んとこに来るんだから。月半ばの退去なら日割り計算で戻ってくるぞ、今月分」

その通りなのだが、コヤツに当たり前のように説明されるとムカつく。

三〇五号室。我が城の前で足を止める。少し留守にしただけなのに、すごく懐かしい。

鍵を開けドアを開ける。そこでハッと気付く。そうだ、今は夏だと思った瞬間、部屋に籠っていた熱気がモアッと吹き出てくる。

「ウワッ! ちょっと待っていて、窓を開けてくる」

玄関脇のスイッチを押し、明かりがつくと同時に靴を脱ぎ、中に飛び込む。

「イヤ、いい」と、佑都も入って来る。

バタバタと窓を開け、扇風機を回す。粗方空気の入れ替えができたところで、エアコンをつけ、玄関のドアと窓を閉める。

もう、汗だくだ。

少し涼しくなったかな、と思ったところで佑都を見ると、彼はキッチンと洋室の間に立ち、珍しそうに部屋の中を見回していた。