迷走女に激辛プロポーズ

コヤツ何を言い出すのだと呆れて見ていると、「とりあえず」と彼が言う。

「夕飯を食べたら、車を取りに戻る」

それでか! どうりでアルコールを頼まなかった筈だ、と解する。
コヤツ、私と話し合いするまでもなく、最初からそのつもりだったのだ。

ムッとし、持っていたフォークを強く握り締めると、勢い良くチキンに突き刺す。

「強引! 横暴! 人権無視! そんな勝手な命令には従わない。それに、家には上げない」

佑都の片眉がピクリと上がる。

「ホホーッ、なぜだ。訳を聞こう」

佑都の瞳が一気に氷点下まで下がる。仕事でたまに見る目だ。こういう目をする佑都が一番怖い。

途端に沸き上がった怒りがシュルシュルと萎む。

「だって、急だし、都合有るし……」

正当な理由など無い、思い付きもしない。言葉尻がだんだん小さくなる。

「急は分かるが、何の都合だ。お前の都合に合わせていたら、一生引っ越しなどできない。覚悟を決めろ! この件はこれで終了」

勝手に打ち切られてしまった。

納得せぬまま、不貞腐れ気味にパリパリチキンを頬張る……が、やっぱり美味しい。
モグモグと咀嚼し、ゴクンと飲み込み、しかし……そうかもしれない、と思い直す。