迷走女に激辛プロポーズ

「久し振りだね、元気にしていた?」

圭吾は近付いて来たかと思うと、いきなりグッと顔を近付ける。
オット、と俊敏に後ろに仰け反ったところに、清香が割って入る。

「冨波様、お止めください。貴方も命は惜しいでしょう」

何のことだと思っていると、聞き覚えの有る、でも、場違いな声が聞こえた。

「圭吾、それ以上近付いたら、お前の大好きなお姉ちゃんたちと、二度と楽しいことができないようにするぞ!」

ギョッと五歩後退する圭吾。
目を点にする私。

そこには、滅多にお目に掛かれない、正装をした兄修一が立っていた。

「黒騎士みたい……カッコイイ!」

これは遥香の呟きだ。
黒騎士に女流剣士……我が兄妹は闘う戦士という位置付けなのか? 疑問だ。

「楓、無事だったか!」

兄は私の側に来ると、グッと肩を抱き、身もすくむような冷たい眼を圭吾に向ける。

圭吾はブルッと一つ身震いし、手にあるシャンパンを一気に飲み干し、引き攣った笑を浮かべる。

「修一さん、ご無沙汰しております。もう、冗談ですよ勘弁してください」

兄はどうやら、圭吾とも顔馴染みのようだ。
この人の交流関係は、果てしないようだ。