迷走女に激辛プロポーズ

マンションに戻ると、お風呂上がりの佑都が薄暗いリビングで、ソファーの背にもたれビールを飲んでいた。

私の姿を見ると、ガチャンとテーブルに缶を置き、走り寄りキツク抱き締める。その拍子に手に持つビジネスバッグが床に落ちる。

「楓、ごめん!」

何がごめんなのだろう……彼女とのキス? 私との付き合い? 

「アイツにもう恋愛感情は無い!」

もう……?

「年上の彼女に憧れ、高校の時、一年ほど付き合っていた」

ああ、だから言い淀んだのか……。

「今はそういう感情も付き合いも無い。だが、アイツは遠縁で一族とはビジネス・ファミリーの間柄だ。だから仕事関連での付き合いは未だある。だが、それだけだ」

元カノ……遠縁……ファミリー……複雑な間柄だ。
でも、なぜ今、彼女と会う必要が有る?
仕事? 海外事業部でそんな仕事はない!

「アイツ、自分のブランドを持つジュエリーデザイナーで、それで今回……」

佑都は「少し待っていて」と言って、自室に入り、戻ってくるとリングケースを差し出す。

「お前をイメージして、これを作ってもらった」

ケースに描かれた『М』のマークは、世界的に有名なメイ・槇原のもの。
彼女、中々オーダーできない幻のジュエリー作家としても有名だ。